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加速する街東京で、消えない「個」を追う連載企画 「Why are you in Tokyo?」
刺激とスピードに満ちた街、東京。 絶え間ない変化の中で、人々は自分を磨き、強く、美しく振る舞う。
けれどその内側には、外からは見えない葛藤や悩みがある。不格好でリアルな感情、そして純粋な想い。
表現者たちは、なぜ東京を選び、ここで活動を続けるのか。会話を通して、都心で生きる若者たちの飾らない素顔を切り取る。
今回登場するのは、シンガーソングライターとして活動するsheidA。
LA、NY、そして東京。多様な文化的背景を持ち、
アニメやオタク文化から得たインスピレーションを独自の音楽風景へと昇華させる彼女は、現在、新世代音楽シーンの最前線で異彩を放っている。
かつて「自分のアイデンティティ」を管理される道に違和感を抱き、自らペンを取ることを選んだ彼女。
その旅路と、東京で見つけた「嘘のない表現」について聞いた。
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―― 現在の活動について教えてください。
シンガーソングライターとして活動しています。
LAで生まれてブルックリン(NY)で育ち、今は東京。この多様な都市で過ごした時間が、私という人間と音楽のベースになっています。
自分を語る上で欠かせないのは、アニメやオタク文化から得たインスピレーションです。小さい頃からアニメや漫画が大好きで、
そこから受けた刺激を自分の音楽に融合させていくことで、自分にしか作れないユニークな音楽の風景を描きたいと思っています。
―― 幼少期から、常に音楽が身近にある環境だったのでしょうか?
父がジャズミュージシャンで、住んでいた場所が窓のないガチのスタジオだったんです。
母もゲーム関係の仕事をしていて、家の中は常に音楽とゲームミュージックで溢れていました。
若い頃は、父が作るジャズと、私が興味のあったエレクトロニックな音の間で「これは本物の音楽じゃない」なんて喧嘩をしたこともありました(笑)。
でも、そんな環境があったからこそ、人生のそばには常に音楽がありました。
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―― 東京へ来る直接のきっかけは何だったのですか?
北海道に住んでいた16歳の時に受けた、バンドのボーカルオーディションです。それがきっかけで東京へ引っ越しました。
当時は大手レーベルと契約して、デビューに向けたレールも敷かれていました。
もともと「アーティストになりたい」という気持ちは大きかったのですが、当時はまだ、自分自身で音楽を書きたいという思いまではそこまでなかったかもしれません。
――敷かれたレールの上を歩むのではなく、自ら音楽を作る道を選んだのはなぜですか?
事務所での活動が始まると、ビジュアルや立ち振る舞いを含め、求められる「アーティスト像」が明確にありました。
それはプロとして必要なことだと理解しつつも、当時の私は「自分って誰なんだろう」と、自分のアイデンティティを探している真っ最中だったんです。
このまま完成されたイメージの中にいるだけでは、本当の自分を見つけるのは難しいかもしれない、と感じ始めていました。
そんな時、アンダーグラウンドのライブを見に行く機会がありました。
そこで同世代の女の子が、自分の言葉で、自分で作った曲を歌っている姿を目の当たりにして。
その瞬間、「自分の音楽を、自分の手で作りたい」という気持ちが心の底から湧き上がってきたんです。
誰かに委ねるのではなく、自分の中から出てくるものを形にしたい。その直感に従って、自分でペンを取る道を選びました。
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―― 初めて東京に来た時の印象はどうでしたか?
「完璧すぎる!」って思いました(笑)。10代の私にとって、東京はNYのようなワクワクが詰まった場所。
109に行けば漫画で見ていたキラキラした世界が広がっていて、「絶対ここに住む」と決めました。
最初は親の助けを借りず、自分でバイトをして、デザインのインターンとかいろんな仕事を掛け持ちしながら一人暮らしの資金を貯めました。
自分の力でこの街に立つ、ということが私には重要だったんです。
―― 18歳から本格的に音楽活動を始めた際、どのように仲間を広げていったのですか?
最初は機材の使い方も分からなくて、スマホのメモ帳にペンで歌詞を書くところからのスタートでした。
19歳くらいからソフトの使い方を勉強し始めて、仲間が増えたのは渋谷の「UNDERBAR」というクラブに通い始めてからです。
そこには同じような熱量を持った若い世代が集まっていて、何度も顔を合わせるうちに自然とコミュニティが広がっていきました。
そこで音楽活動を支えてくれる仲間たちに出会えたんです。
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―― 音楽活動を続ける中で、自分自身の内面にも変化はありましたか?
実は21歳くらいまで、かなり酷い鬱を抱えていた時期がありました。
でも今は、考え込むより「何か行動したほうがいい」というマインドに変えて、すごくポジティブになれました。
音楽はその感情のリリース場所(発散場所)でした。私はカラオケが苦手なんです。
他人の曲を借りて演技をするんじゃなくて、自分の本当の気持ちを出したい。自分で書く曲は、自分に対して嘘をついていない。
「本当のこと」を言えるのが、音楽の一番美しいところだと思っています。
―― 今の東京のコミュニティやシーンを、sheidAさんはどう見ていますか?
たまに、みんながトレンドを追いすぎて、個性が画一化してしまうのを寂しく思うこともあります。
でも、今のアンダーグラウンドシーンは昔よりずっと良い方向に変わっている。
今は女性の表現者も増えたし、純粋に音楽を楽しむ対等な空気がある。いろんな背景を持つ人が自分の好きなものを貫ける場所として、今が一番楽しいですね。
―― 好きなことを仕事にできている現状を、どう捉えていますか?
もちろん、大好きな音楽を仕事にできているのは幸せなことです。
でも、たまにふと「本当にこのままでいいのかな?」って、立ち止まって考えてしまう瞬間もあります。
「純粋に楽しんでいた頃の自分」を失っていないか、どこか不安になることもあるんです。
でも、そうやって悩むのも、自分が音楽に対して嘘をつきたくないからなのかなって。
今はその「迷い」さえも、自分に嘘をつかずに書き上げる曲の中に、一つの感情として込めていきたい。そうすることで、また新しく前向きな自分になれる気がしています。
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LA、ブルックリン、そして東京。境界線を軽やかに飛び越えてきたsheidAは、与えられた「正解」を拒絶し、自らの手でアイデンティティを綴る道を選んだ。
アニメやオタク文化から抽出された色彩豊かなインスピレーションは、
彼女というフィルターを通すことで、東京のコンクリートジャングルを彩る独自のポップミュージックへと姿を変える。
「自分に嘘をつかない」という彼女の決意。その声は、トレンドの荒波に消えることなく、新世代の音楽シーンにおいて確かな熱を持って響き続けていく。
今回彼女が着用したのは台湾ブランドFallen Angels
エッジの効いた大胆なデザインが特徴で、独自のスタイルが話題となっている
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